記憶の破片12叫べども、叫べども、未だ狂うこと叶わず。苦しみに酷似した、その自己陶酔で身を焼き、 快感に酷似した、その自己否定の海に沈む。 海は虚ろに瞬き、光と闇の、紙一重の永遠からこぼれ落ちる。 淡く、しかし強烈な潮の匂いは、 遠く、彼方から漂い、 目や口や鼻や耳、身体の隙間という隙間から入り込む。 ほう、と息をつく暇も無く、押し寄せるあの波は、 我が腐乱した心を浄化できるというのだろうか。 ばらばらに砕け散ってしまえ。白い気泡の中の、哀しい夢想も、喜びも。 この腐乱した精神もろともに。 暗く、碧い海の底の圧力に押されて、消えてしまえ。 空気の濃密な、それでいて息苦しいその海底で、 青く光る頭上を振り仰いでは、痛みに耐えきれず、 我が体内の海が、この水と同化する。 ぐずぐずに崩れ、溶けかかったその破片は、 皮肉にも、元の身体より澄み渡っているのだろう。 そうして溢れた海の中には、びろうどのように柔く、 また、発狂を促すような微かな震えがざわめき、 まるで目眩く煌々とした音楽が、闇の中の憂いを恍惚とさせているかのようである。 ジャンル別一覧
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